スペイン王室について② 〜王室はもういらない!?〜

前回は、スペインの華麗なるロイヤルファミリーとその歴史を紹介いたしました。

>前回の記事はこちら「スペイン王室について① 〜スペインの華麗なるロイヤルファミリー〜」

今回は、その人気低迷の理由に迫っていきます!

 

2014年に生前退位を果たした前国王「フアン・カルロス1世」は、1975年、それまで独裁政治が行われていたスペインを、見事民主化させることに成功しました。
そういう経緯から、当時は非常に高い人気を誇った国王だったのでした。

ところが現在、王室の人気は著しく低迷しています。さらには、王室廃止の話題まであがっているというのです。

 

以下の王室の人気を表す世論調査のグラフからは、2000年あたりからどんどんその人気が低迷しているのが見て取れます。
そして、前国王のフアン・カルロス1世が退位し現国王の「フェリペ6世」が王位継承した直前の時期(*2014年に王位継承)が、最低となっています。

この年には、首都マドリードの中心街で大規模なデモも起こり、多くの人が君主制の廃止を訴えたのでした。

この人気急落の背景には何があったのでしょうか?

 

そこには、多くのスキャンダルがありました。

その中でも最も批判を浴びたのは、前国王のフアン・カルロス1世の「ゾウ狩り」でした。もともとハンティングが趣味だった前国王でしたが、プライベートでアフリカを訪れ、象牙を手に入れるためゾウを殺していたのでした。さらには殺したゾウの前で記念撮影までしており、その写真が世に出回ってしまったことがきっかけでした。

これは動物愛護の視点からはもちろんのことですが、当時、失業率が高く緊縮財政を敷いていたスペイン。その国民のお金を使って行われていた旅行だったため、ここで国民の怒りが爆発し、デモにまで発展したのでした。

この事件があったのは、先にあげたグラフで、人気が最低になってきている時期とちょうど重なります。

つまり、スペイン国内だけでなく世界中から批判を浴びた国王は、このことがきっかけで異例の「生前退位」に踏み切ったと言われています。
まだクリーンなイメージの息子に王位を譲ることで、なんとか事態を収拾しようとしたのでしょう。

 

このゾウ狩り事件の前より、王室には様々なスキャンダルがありました。

中でも注目を集めた事件が、前国王の娘であり現国王の姉であるクリスティーナ王女が、王族でありながら刑事裁判にかけられたことでした。その疑いは、大規模公金横領事件に関与したこと。結局、クリスティーナ王女は疑惑つきのまま無罪判決となりましたが、主犯であった彼女の夫は、有罪判決を受け服役することとなりました。そして、またしてもそれは”国民のお金”でした。

 

現在も王室のスキャンダルは続いています。以前より、現国王の妻であるレティシア王妃と姑のソフィア王妃との不仲説がささやかれていましたが、最近は嫁であるレティシア王妃がマスコミの前で姑に嫌がらせをする様子が映像で流れてしまうなど、長年に渡り国民があきれてしまうようなニュースが続いた結果、王室は国民の人気と信頼を失っていったのでした。

 

今なお続く王政廃止の是非に関する議論。最近の世論調査では、王室を支持しないという回答がついに50%を超えたと言われています。

 

現在スペイン王室は「国の象徴」として存在しており、そこに政治的な権力はありません。

それは日本の皇室や英国の王室も同じです。

政治的な権力がない王や天皇は、国民に愛されることで成り立っているのかもしれませんが、それを失ってしまったスペインは、今後どうなっていくのでしょうか?

国民が望んでいるのであれば、近い将来、王室が廃止されることも起こりうるかもしれません。

ページトップへ