シェリーの収穫際!〜Fiestas de la Vendimia en Jerez〜

9月に入りましたが、日本ではまだまだ残暑が続き蒸し蒸しとした日々ですね。しかし、季節は夏から秋へと向かっています。実りの秋と言われる季節ですが、スペインでもこれから各地でワインのブドウの収穫祭が開かれる季節になってきました。

今日は、一足早く収穫祭が始まっているアンダルシア地方にあるJerez(ヘレス)の街で開かれる「ヘレスの収穫祭」(シェリーの収穫祭)についてお話します。

Fiesta de Jerez2

スペインはワインの産地としてよく知られていますが、同時に「シェリー酒」の国としても有名ですね。この「シェリー」という言葉、実は英語読みであってスペイン語ではないのです!

vino de jeres

スペイン語では、“Vino de Jerez(Xerez)”(ビノ・デ・ヘレス)といい、「ヘレスのワイン」という意味です。

紀元前、この「ヘレス」の街はフェニキア人に支配され「Xera(ヘラ)」と呼ばれていましたが、その後はアラブ人によって支配され「Sherish(シェリシュ)」と呼ばれるようになりました。その頃、このお酒がイギリスへ輸出されるようになったため、Sherirh(シェリシュ)が英語訛りに変化し「Sherry(シェリー)」と呼ばれるようになったと言われています。

つまり、シェリーと聞くとお酒の名前を意味しているようですが、実はアンダルシア地方の街の名前である「Jerez(ヘレス)」という意味だったのです!

Mapa de Jerez

現在でもシェリー(Vino de Jerez)は、このアンダルシア地方のカディス県に位置するヘレスとその周辺の地域を含む3地域で作ったものだけが名乗ることのできるお酒として原産地呼称制度で厳しく守られています。

 

では、そもそもシェリーとはどんなお酒なのでしょうか?

日本語ではそのカテゴリーは「酒精強化ワイン」とされ、ポルトガルのポート・ワインやマデイラと共に世界三大酒精強化ワインのひとつと言われています。

酒精強化ワインは、ワインという名前がつくだけあってリキュールや蒸留酒ではありません。あくまでも、白ブドウのみを使った白ワインの一種ということになります。しかし、通常のワインとの違いは発酵〜熟成の方法です。

ヘレスではこの9月上旬にブドウの収穫が行われます。果実をプレスして果汁を絞った後はステンレスタンクで1ヶ月程アルコール発酵をさせます。ここでアルコール度数は11〜12度程となり、通常の辛口白ワインと同じ状態です。しかし、シェリーの場合はそのまま11月頃まで寝かせ続け、ワインの表面に「Flor(フロール)」と呼ばれる産膜酵母を発生させます。フロールとは、スペイン語で「花」という意味で、このフロールがシェリー独特の風味を作っているのです。

la flor vino jerez

その後、酒精強化(アルコールを高める作業)を行い、15〜17度くらいまで度数を上げていきます。

最後は、ワインを木樽へ移し樽熟成させます。この熟成課程はシェリー独特のもので、古いシェリーと新しいシェリーをブレンドしながら熟成させていく「ソレラ熟成システム」と呼ばれる手法を使っています。

熟成庫で重ねられた樽は下から古い順に重ねられており、一番下の樽から瓶詰めされていきます。しかし、この際に瓶詰めで目減りした一番下の樽に、下から2番目の樽の中身を補充します。今度は、減ってしまった下から2番目の樽に、下から3番目の樽の中身を補充していく、これを繰り返していきます。最後の一番上の樽は、まだソレラシステムに入っていないその年にできた新しいシェリーを補充します。そうする事により、メーカーの味を継承し、毎年安定した品質のシェリーを出荷することができるのです。まるで日本の継ぎ足しで作る老舗のタレのような原理ですね。

BotaConsejo

criaderas y soleras

そんなシェリー酒の収穫祭が、この9月1日〜18日までの間、ヘレスの街で行われています。ブドウの収穫に感謝を捧げるお祭りですが、お祭り期間中は様々な楽しいイベントが開催されています。フラメンコの地であるアンダルシアらしく、街中でフラメンコの衣装を身にまとった艶やかな女性達がお祭りを彩り、伝統的な「ブドウの足踏み」を見る事ができる他、街のいたるところでシェリーが振る舞われています。

Fiesta de Jerez1

Fiesta de Jerez3

この時期にアンダルシアを訪れる機会のある方は、辛口〜甘口まで様々な種類がある本場のシェリーをテイスティングしながら陽気なアンダルシアの人々と飲んで踊って楽しいひと時を過ごしてみて下さい!

日本にいる皆さんも夏が終わりキンキンに冷えたビールから、この秋はちょっと味わい深いシェリーにシフトし、アンダルシアの深い香りを楽しんでみてはいかがですか?

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